No.671 不安がパンデミック

 新型肺炎の話題が後を絶たない。様々な報道を聞きながら2009年に大流行した「新型インフルエンザ」のことを思い出していた。
 幼稚園の年長組の子どもたちを連れて箱根の林間保育。その出かけた先でひとりの女の子が高熱を発症した。保健室に割り当てられた部屋でみんなとは別行動。職員も一人はその子の世話のため同室で居続ける。
 開院時間の内にと仙石原に一軒だけある開業医を訪ねた。当該の女の子と保健室で一緒に過ごしている職員、そして園長車を運転するわたしの三人。医院にはかなりの患者がいたが、通常通り受付をして待っていた。するとしばらくして女医さんが「すぐに隔離!」と叫んでいる。わたしたち三人は医院の正面玄関から出て裏手に回り、裏口から病室へと通され、そこで待たされることになった。
 仮に新型ということになると、彼女は当然、そして付き添った職員もわたしもいわゆる「濃厚接触者」ということで三人は経過観察処置になる。そうなればホテルに戻ったとしても今夜から明日のプログラムに戻ることは不可能だろう。今から川崎に戻るまでの間で、一緒に来た職員をどう動かすか、観光バスと園長車をどうやり繰りするか──。「隔離!」との声を聞いてから病室で待っている間の、それほど長くはなかった時間にも関わらず、頭の中はフル回転していた。
 結局流行りの新型インフルエンザではなかったのだが、それでも彼女は以後も別行動となり、翌日は別の職員が運転する園長車で箱根登山電車強羅駅まで送り、そこまで迎えに来てもらった家族に引き渡したのだった。
 今だから懐かしいと微笑んで思い返せる出来事。当の女の子もプログラムにほとんど参加出来なかったのに「林間楽しかった」と。でも武漢から帰国した人たち、帰国を待ちわびたそのご家族の心中は察するにあまりある。

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