コロナ感染・拡大防止のために行動の自粛が求められてもうどれ程経っただろう。緊急事態宣言からももう三週間だ。このところ目にするのは、「こんな時に常識を疑うような行動をとっている」というような言説や報道。休業要請に従わないパチンコ店と、そこに集まる客の非常識さを非難するような(それでいて「非難」ではないように装うような)報道が連日テレビを賑わせている。同じようなことがゴルフ練習場でも。わざわざヘリを飛ばして「駐車場が満車です」と。
高円寺のライブハウスで「せめてオンライン配信で」と3密を防ぐ手立てを講じた上で行った無観客ライブに「安全のために、緊急事態宣言が終わるまでにライブハウスを自粛してください。次発見すれば、警察を呼びます。 近所の人(原文ママ)」という張り紙が貼られたらしい。
なるほど、第2次大戦中のこの国では「隣組」制度が極端に発達して「非国民」を密告し国民相互監視体制が成立していったというのも頷ける。隣家を特高に密告するなんてどういう精神かと理解に苦しんだのだが、昨今の状況を見たら、それはいとも簡単なことだったのだと教えられる。
2017年に東名高速で起こった事故を契機に、「あおり運転」が社会問題となった。あおり運転は何故起こるのか。実は煽る人は「正しいことを行っている」という意識があるという。その後起こった常磐道でのあおり運転では逆に、その報道に接する側の人が一斉に「悪」を叩くことで自分の「正しさ」が証明されるという心理が働いたようだ。結果、国中で煽り男に対する怒りが沸騰した。
自粛要請が出されているのだから自粛することが正しいのだ。「悪」は晒し者にし、徹底的に糾弾するべきだ。コロナはそういう空気を凄まじい勢いで醸成した。それに異を唱えることは難しいのだ。