No.712 意見の異なる者がいる幸

新型コロナウイルス対策分科会尾身茂会長の記者会見【時事通信社提供】

 政府の新型コロナウイルス対策分科会尾身茂会長がテレビで見せたシーンは衝撃的だった。おそらくこれまでたくさんの学究成果を持っておられる専門の先生で、しかも御年71歳だと思われる方が、「食べるときは左手で(マスクを)外して、食べる。その時は喋っていません。食べるときはしゃべらない。飲み込んだら、(マスクを再びつける仕草)。」。子どもにでもわかるような丁寧な説明…ではなくて、なんだかそれを見せられている私が小馬鹿にされたようで腹が立った。
 これまで何度となく国民に向けてコロナ対策をご指南くださった会長だ。そのご苦労も偲ばれる。だけど、「新型コロナウイルス対策分科会」の仕事は科学的見地から有効と思われる政策を提言すること(新型インフルエンザ等対策特別措置法第6条第5項「新型インフルエンザ等対策を実施するための体制に関する事項」)ではないのか。もちろん非公開分科会だからおそらく席上では侃侃諤諤の議論が交わされていると信じたいが、いかんせん表に出て会長から出る言葉はほぼ全て国民に対する(要らん)指示ばかりに思える。
 つまりそういうことが「日本学術会議任命拒否」問題なのだ。本来政府が行おうとしていることの是非や真偽を、学術的分野から判断し提言してくれる存在がどうしたって必要だろう。であれば政権の意に沿わないことだって当然ある。だが、単に権力的に全てを推し進めるのではなく、学術的な批判に耐えられるものかどうかをしっかり見極める慎重さは絶対必要だ。逆に言えばいわゆる「御用学者」だけ集めて政権の意に沿うことだけを進言させていたら(いるから?)あんな衝撃的な映像が出来上がるのだろう。
 意見の異なる者をそばに置くのは、当然ながら苦労も多い。だからこそ「丁寧な説明」を含めた議論が大事なのだろう。ありゃ、「丁寧な説明」って言いさえすれば、やったことになるんだっけ?

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